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『紅の砂漠』レビュー:荒削りな野心が、更新を経て本物の冒険になった

『紅の砂漠』レビュー:荒削りな野心が、更新を経て本物の冒険になった

Ali(JPGames.online)

発売から約5ヶ月。Pearl Abyssが初めて本格的に挑んだシングルプレイヤーのオープンワールドアクションアドベンチャー『紅の砂漠』は、当初こそ賛否が激しく分かれたが、今や明確に「遊ぶ価値のある大作」になった。発売直後の荒さを、開発チームが素早く、そして粘り強く磨いてきたからだ。2026年8月末に配信された無料大型アップデート「Enhanced」で、日本語ボイスが追加され、ストーリーの流れも補強された。今、プレイするならこの状態がベストタイミングだと思う。

私は発売直後から断続的に遊び、Enhanced後にもう一度通しで触った。総プレイ時間はすでに100時間を超えている。まだ「全部やり切った」とはとても言えない。それだけのボリュームと密度がある。

物語の骨子と、世界の肌触り

舞台はファイウェル大陸。北の高地を拠点とする傭兵団「灰色たてがみ(Greymanes)」の一員であるクリフが主人公だ。宿敵「黒い熊団」の夜襲で団は壊滅的な被害を受け、仲間は散り散りになる。クリフは生き残りを集め、団を再建し、失ったものを取り戻す旅に出る。

表向きは「仲間を探す」「仇を討つ」というわかりやすい復讐譚だが、旅を進めるうちに「アビス」と呼ばれる異次元の存在が絡んでくる。アビスは単なる魔法の源泉ではなく、大陸の運命そのものに深く関わる。序盤は傭兵団の再興が主軸で、中盤以降はより大きな脅威と対峙する構造だ。

ストーリー自体は王道で、キャラクターの感情描写が控えめだったり、説明が足りなかったりする部分は確かにあった。特に発売直後は「何のために動いているのかわかりにくい」「会話が薄い」という指摘が多かった。Enhancedではカットシーンやセリフが追加され、ボスの背景やクリフの動機が少し丁寧に補われた。日本語ボイスが入ったことで、感情のニュアンスも拾いやすくなっている。完璧ではないが、「ただの骨組み」から「血が通った物語」に近づいた印象だ。

世界の作り込みは本当にすごい。街ではNPCが日常を営み、天候が変われば行動が変わり、犯罪を犯せば反応する。柵を壊せば問題になるし、雨が降れば頭を押さえる住民もいる。細部へのこだわりが「生きている世界」を感じさせる。ファイウェルは広大で、草原、森、砂漠、雪山、遺跡、街がシームレスに繋がっている。遠景の美しさと近景の密度のバランスが良く、ただ歩くだけで発見がある。

の自由度と、泥臭い達成感

戦闘が本作の最大の魅力の一つだ。ロックオンを基本にしつつ、弱攻撃・強攻撃・投げ・蹴り・掴み・パリィ・回避を自由に組み合わせられる。プロレス技のような豪快な投げやラリアット、ドロップキックが普通に出る。敵を壁に叩きつけたり、集団の中に放り込んだり、環境を利用した戦術が活きる。

武器は片手剣、大剣、槍、斧、弓、銃器など多彩で、二刀流も可能。素手での格闘も実用的だ。さらにアビスの力を使った特殊アクション(掌波や集中など)が加わり、コンボの幅が広い。集団戦では特に爽快で、戦場にいるような臨場感がある。一方でボス戦はパターンを読まないと厳しく、無敵時間や攻撃の容赦なさで何度も心を折られることがある。発売直後は操作の慣れが必要で、「もっさりする」「ボタン配置が複雑」という声が多かったが、パッチでかなり改善された。今は指が覚えるまで10時間くらい我慢すれば、気持ちよく繋がるようになる。

成長システムは従来のレベル上げではない。アビスアーティファクトを集めて生命力・気力・精神力を強化し、スキルを習得する形式だ。敵やNPCの技を観察して覚える要素もあり、探索と成長が密接に結びついている。Enhancedではスキル習得の仕組みがさらに整理され、複数キャラクター間のリソース共有も改善された。

操作キャラクターはクリフだけでなく、物語が進むとウンカ(重厚な戦士タイプ)とデミアン(機敏なタイプ)も使えるようになる。それぞれ武器適性やスキルツリーが違い、遊び方が変わるのが面白い。メインストーリーは主にクリフ中心だが、サイドでは自由に切り替えられる。

探索と生活の楽しさ

オープンワールドの密度が高い。メインを追うだけでも十分だが、寄り道すると本当に時間が溶ける。釣り、料理、錬金、狩猟、騎乗生物の調教、拠点の拡張、行商、ギャンブル……やることは多い。騎乗は馬だけでなく、伝説級の動物やメカ、ドラゴンまで出てくる。崖を登り、グライダーのように滑空し、アビスの力で移動する。ゼルダシリーズの探索自由さと、RDR2的な世界の重みを足したような感覚だ。

拠点運営は傭兵団らしい味わいがある。仲間を集め、キャンプを整え、勢力を拡大していく過程が「再建」の実感を伴う。犯罪システムや評判もあり、行動にそれなりの結果が返ってくる。すべてが深く作り込まれているわけではないが、「やれることが多い」という満足感は強い。

グラフィックと技術面

BlackSpaceエンジンの出来は優秀だ。遠景の描写、天候、ライティング、キャラクターの動きが綺麗で、特に大規模な戦場シーンは圧巻。PC版ではネイティブ4K60fpsを狙える環境も多い。コンソールでも安定している印象だ。ただ、発売直後はバグやロード時間、UIの煩雑さが目立った。倉庫やインベントリ管理が面倒だったり、説明が不親切だったりした。パッチでロード短縮、操作改善、UI調整、難易度オプション追加などが入り、今はずいぶん快適になっている。

音響も良い。戦闘の打撃音、環境音、BGMが世界に馴染んでいる。日本語ボイスが加わったことで、さらに入り込みやすくなった。

気になる点を正直に

完璧なゲームではない。

  • 学習コストが高い。操作もシステムも説明不足気味で、最初の10〜20時間は「何をすればいいのか」と迷う可能性がある。
  • ストーリーの厚みは今でも「探索や戦闘を支えるための骨組み」に近い。キャラクターに深く感情移入できるかはやや人を選ぶ。
  • ボス戦の一部は単調だったり、理不尽に感じたりする。
  • コンテンツの多さが逆に散漫に感じる瞬間もある。「全部やりたい」と思うと沼るが、「メインだけ」では物足りない人もいるかもしれない。

これらは「粗削りな野心作」という言葉がぴったりだった部分だ。しかし、開発チームがユーザーの声を拾って更新を続けた結果、発売から数ヶ月で評価が明確に好転した。Steamの評価も「非常に好評」に落ち着き、販売本数も数百万単位に達している。

誰に勧めるか

  • 広大で密度の高いオープンワールドを歩き回りたい人
  • 戦闘の自由度とコンボの気持ちよさを重視する人
  • 「説明書を読まずに体で覚える」タイプのプレイヤー
  • 100時間単位でじっくり遊びたい人

逆に、ストーリー重視でテンポよく進めたい人、操作がシンプルなゲームが好きな人、短時間でサクッとクリアしたい人には少しハードルが高いかもしれない。

総評

『紅の砂漠』は「欲張りすぎた野心作」から、「欲張りさを活かした本格オープンワールド」へと進化した。戦闘の手応え、世界の生き生きとした描写、探索の報酬感は、同ジャンルの中でも上位に来る。荒さは完全に消えていないが、それが逆に「自分で掴み取る達成感」を生んでいる。

Enhanced後の今、初めて触るならかなりおすすめできる状態だ。腰を据えて遊ぶ覚悟があるなら、ファイウェル大陸はきっと長く居座る場所になる。

私はまだ、あの砂漠の向こうに何があるのか、全部は知らない。だからまたコントローラを握る。

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